『優先席』

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その日、電車に乗ると満席だった。 優先席もすべて埋まっていたので、   仕方なく優先席の前のつり革につかまり、 降りる駅を待った。 目の前に座っていた老人が自分を見るなり、 驚いた顔をして、 『あなたのほうが先なので』と言って、 断る自分に、座らせたのだ。 老人に、席を立たせ、若い自分が座ったことで少し罪悪感を抱えつつ、 やがて降りる駅についたので、降りる。 翌日もその翌日もずっと同じように席を譲られる。 『どうぞどうぞお座りになってください。 あなたが優先ですので…』 微妙な気持ちで席に座るが、 まあ、座れるなら楽だしいいかなと思っていた矢先、 ある朝、電車から降りるときに電車の中にいた人たちに声をかけられる。 『無事に当日を迎えられましたね、ご冥福をお祈りします』 と、花束を渡される。 そして、こちらに一例をする車掌と客たち。 なんのことかわからなかったが、 首をかしげながら、改札を出る。 会社に向かおうと工事中の建物のそばを通ったときに、 クレーン車から吊られていた鉄骨のワイヤーが切れ、女性の頭の上に落ちてきて… その時女性は気づいた。 『あれは、命日が早い順に座るための優先席だったのだ』と… だが、時すでに遅く、 女性は、悲鳴をあげるのだった。
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