呪術というオナニーは報われるはずがない

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さて、高校三年生の秋である。大学に入ることでしか道は拓けないと思う。今から就職したところでコンビニの店員くらいだろう。曲がりなりにも進学校を出たというプライドがある。ただのフリーターとして生きるのはちょっと。これといった自信はないけど、言語化できない自負だけは確かにここにある。このままで終わってたまるか的な自負は。このままだったら直井侑哉と交わらない。言葉を交わしてない。ライブにすら行けない。直井侑哉とは。バンド「キュアリビドー」のリーダーかつフロントマンだ。  僕の夢は世界征服、ツイッターで世の中の建前を剥がしていく  僕の夢はバイトを辞める、うまい方法があるはず  僕は繁華街に行けば逝ける、どこもかしこも卑猥だと思う  ほら そこにはチャットレディがいる、新宿本店  今日もスマホ内で眼鏡のモジャモジャの白衣が脳内で飛び跳ねる。このモジャモジャが直井侑哉で、十年前からバンド「キュアリビドー」を始めた。それまではVシネマのちょい役やちょっとしたイベントの司会をやってコツコツと仕事をしていたけど、元芸人仲間とやっていた音楽活動が芸人より成功するようになってきた。私が直井侑哉に夢中になったきっかけは、ネットで動画を漁って「電波系パンク」「統失パンク」「スピリチュアルパンク」というワードで検索していたらこのバンドが出てきた。今一番のお気に入りがこの「ロングロングツインテール」だ。この曲は実家でニートをやっていた時の直井が洋楽をパクって一日で作った曲でアンニュイな曲だ。その裏でギターとドラムとベースと打ち込みの管楽器が混ざり合うことなく血みどろに喧嘩している。治安の悪い通りを颯爽と歩くように直井はポエトリーリーディングしている。他の曲も似たような感じだが、この曲は特に切実な語りをしている。
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