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タイムマシーンという「報われ」
私は父さんから5万円もらった。その足でバスに乗り電車に乗り継いであの場所に向かった。普通にマンションの一室。なんか床にでっかいシミがあって事故物件臭い。
「いらっしゃい」
「三回分、10万円です」
「こんな大金。普通の人でも出さないよ」
「タイムスリップしたいです」
「いつがいい?」
いつがいいだろう。キュアリビドーのデビュー当時でいいか。あの辺の曲が一番好きだし。
「十年前で。ついでに、場所も指定できますか」
「……いいけど、どこがいいの」
「十年前の東京でお願いします」
「了解。それじゃあいってらっしゃい。サービスにコーラどうぞ。そこの扉を開けて、眼鏡をかけて、ゆっくり休んで」
私は瓶入りのコーラを持たされ、言われた通り扉を開け、部屋に入った。鏡張りの部屋の中でミラーボールが光っている。サングラスのような眼鏡をかけて、コーラを飲みつつ体操座りで待っていると、目の前がフラッシュした。私は時空空間の縫い目を掻い潜り、宇宙を彷徨い、加速して、消えるか消えないかの光になり、その勢いのまま進行を逆に変えた。黒い渦に飲み込まれて、黒い靄でしばらく耐えていた、やがて通り抜けると、目の前に意識が戻ってきた。
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