潜入報告書その①

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潜入報告書その①

 似たような服を着た若い女の子三人が、新しい仮の棲家の前を歩きながら騒いでいる。近くに川があれば一緒に泳ぎたいなと近づいていくと、どうも俺の棲家の話をしているようだ。 「でね、サナが言ってたけどここのマンションに住んでる人達、すごいイケメンなんだって」 「あたしも見た! 海外の人でしょ? 金髪の美少年!」 「美少年? サナが見たの二十代くらいの人だよ! あと黒髪の日本人。すごく顔が整ってるんだって」 「えーっ、じゃ複数いるってこと?」 「マジで中に入りたい!」 「ちらっと玄関とか覗いてみる?」 「あたしら不審者じゃん」 「ゴミとか捨てに出てこないかな〜」 「なあなあ、お姉ちゃんたち俺もここに住んでるんだけど、一緒に川で泳がない?」  声をかけると全員がこっちを見て固まった。 「すいません! 忙しいんで」  ひきつった笑顔で逃げられた。おかしいな、俺今はちゃんと人間のかっこうしてるんだけど。  まあいいや。部屋で買ったきゅうりでも食おうっと。
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