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「こんばんは! ひーちゃんだよ」
年齢不詳の男は人懐っこい笑顔でこちらへ寄って来た。
「こんばんは。月が綺麗な夜ですね。私は203号室の西です」
「僕は301号室のジルベールと言います」
「ワシは四天王の一人、マンドラゴラのドラコじゃ!」
「よろしくね。ひーちゃんは夜だけど頑張って仕事してるよ!」
胡散臭いひーちゃんという男は何か紙の束を持っていた。もしやこやつもスパイで何かの調査をしているのだろうか。
ひーちゃんが吟遊詩人と王子に報告書を手渡す。なぜワシにはないのだ。腹がたつので魔力で報告書の文字を読んでやった。
『孤児院を作っています。
あなたも恵まれない子供達に救いの手を差し伸べませんか?
幸せの会真理教』
胡散臭い見た目からは分からなかったが、このひーちゃんという男、なかなかよい奴じゃな。
「だが、申し訳ない。ワシはすでに魔王様の四天王! どこかの組織に属するわけにはいかんのじゃ」
「それは残念。孤児院は動物がいっぱいだから、キミならすぐ入れるのに……」
「あなたはマンドラゴラに動じませんね」
「動物の友達はいっぱいいるから」
「動物というより植物では?」
「このドラコ殿はここの401号室の河童殿の友人で、頼まれて届けに来たのですが、どうやら不在のようです」
吟遊詩人が伝えると、ひーちゃんは笑顔で頷いた。
「同じ階だから、カッパ君が帰るまでオレが預かるよ! カッパ君とは顔見知りだからね」
「それはありがたい。よろしくお願いします」
西という吟遊詩人はあっさりとワシをひーちゃんに手渡した。
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