2.悩めるヒーロー

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2.悩めるヒーロー

 血圧が、高い。  プリントアウトした健康診断の結果を睨みつける。  下が九十、上が百四十をたたきだせば、立派な高血圧の仲間入りだというが、私の血圧はまさしくそれに迫りつつあった。  まずい、非常にまずい。  私は、ブリザーディーのリーダーだ。  他のカラフルな若手に比べれば、最前線で切った張ったのハードアクションをこなす場面は少ない。  実際、前回の灼灼シャーク戦にしても、ポージングと最後の一撃以外は、ほとんど仁王立ちで眺めていた。  それでも、その機会がまったくないわけではないし、そもそも怪人との戦闘はそれだけでもプレッシャーがかかる。  つまり、非常に血圧の上がりやすい仕事なのだ。  ヒーローたちはみな、何らかの誓いを立てることで、変身するパワーを手に入れる。  凍結戦隊も例外ではない。  名は体を表すとはよく言ったもので、我々の誓いは、戦隊名に近いところにあった。  ヒーローたるもの、冷静たれ、だ。  具体的にいえば、血圧が百五十を上回ってはいけないのだ。 「黒田さん、上が百三十八って……それ、本当にまずいですよ」 「こら、勝手に見るな。プライバシーの侵害だぞ」 「マイページで見れんのに、プリントアウトなんかしてるからですって。リーダー、そろそろ潮時なんじゃないっすか?」  深刻そうに顔をしかめてブルーこと紺野が言い、同調したレッドこと赤木がにやにやとする。  潮時とは本来、ちょうどよいタイミング、チャンスを意味する言葉だ。  現代よく耳にする使われ方が誤用なのだ。これだから今時の若者は。私は内心で憤る。 「リーダーってただでさえ緊張しいなんすから、いいとこで変身とけてパンイチとか、やめてくださいよ?」  おのれ赤木め、やめてくださいと言いながら、どうしてにやついているのだ。  完全に期待しているじゃないか。これが噂に聞く煽りというやつか。現代の闇、親父狩りの前兆か。  しかし、赤木の話を笑ってばかりはいられない。  やつの言うとおり、立てた誓いを破ればたちまち変身は解け、ヒーローとしての能力も翌日まで使えなくなってしまうのだから。
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