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「どこも人材不足だし、うちは採用自体に苦労してるんだから、もうしばらく黒ちゃんには頑張ってもらうしかないんじゃない?」
イエローこと黄之瀬が、コーヒーを片手にやってきて、冷めた様子で言う。
「うちの誓いって結構やばいっすよね、冷静たれとかいい感じに言ってるけど、血圧制限て」
紺野と赤木が顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめる。
文句があるなら、先代リーダーのレッドに言ってほしいものだ。
確かに、誓いを立てる場に私もいたことは認めよう。
血圧なんぞを気にする必要のなかった、若気の至りであることも認めようではないか。
しかし我々は、誇りをもってやってきた。
大体にして、昨今の誓いが緩すぎるのだ。
「その話なら何度もしただろう。戦闘後はメンバー全員で必ずサウナで整えますだの、ゲームは一日三時間までにしますだの、そんなものが誓いといえるか」
「いえるから変身パワーもらってんでしょうが」
「ヒーローとしての自覚が足りん、そんなことだから、まとめて量産戦隊だのと言われるんだぞ」
「いいじゃないですか、量産戦隊。味方、多い方が楽だし頼もしくないです?」
「ええい、そんなことだから我々は……!」
「落ち着いてよ、変身する前から変身とけちゃうわよ」
ヒーローとしての責任感について、今日こそ説いてやろうと意気込んだ瞬間、警報が鳴り響いた。
「出動か。そういえばホワイト……幸村はどこへいった?」
「あら、そういえばまだきてないわね。直行にしてもらいましょ」
「遅刻だなんて、ヒーローとしての」
「黒ちゃんだって、二日酔いでぎりぎりの時とかあるでしょ? カリカリしないで、準備しましょ」
頭の奥がかっと熱くなるのを抑えて、私は皆を引き連れ、事務所を飛び出した。
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