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3.決戦
「黒田さん、下がってください!」
私めがけてまっすぐに突っ込んできた、人間の頭ほどもある巨大なイナゴに、紺野がハイキックを浴びせる。
「一人だけ下がってなどいられるものか。私は足手まといにはならんぞ」
「あんたのためじゃないっての」
赤木が別のイナゴをアッパーで打ちのめし、吐き捨てる。
「黒ちゃんの変身が解けちゃったら、私たちってばロボちゃん呼べないものね」
「つまり、その時点で負けってこと。忌々しい」
コンビプレーで数匹のイナゴを退けた黄之瀬と幸村も、口々にこぼす。
今度の怪人はとても厄介なやつだった。
本体は大した怪人パワーを持たないが、小型の分身を次々と作りだせる、イナゴ怪人。
一般の灼熱バーサーク団の戦闘員を盾にしている間に分身を増やし、その数はもはや、手がつけられないほどに膨れあがってしまった。
我々ブリザーディーは多勢に無勢の中で善戦しつつ、じわじわと血圧の上昇を余儀なくされていた。
そして残念ながら、五人の中でもっとも危ういのは私だ。
息はしばらく前から切れているし、動悸もしている。
最新の腕時計型血圧計が、百四十六の数値を、警戒せよとの赤い明滅付きで表示し続けている。
本当に血圧を抑えてほしいのなら、どぎつい赤色を明滅させるなどという、狙っているとしか思えないエフェクトを、今すぐやめるべきではないのか。
四人のカラフルな若手に守られ、どうにか呼吸を整えにかかる。
「そのままでいいから、聞いて」
ステッキから微弱な冷気を発して私をクールダウンさせながら、幸村が厳しい目つきで言った。
実際にはマスクで顔が隠れているので、目つきなど見えはしないのだが、これはもう間違いなく、厳しい目つき以外の何物でもない声色だ。
「コールドシュートで、とどめを刺すのよ」
「なんだって? こんな大群の中でどうやって? それに一撃の威力なら、君か黄之瀬の方が上だろうに」
「リーダー。悔しいけど、これは私たちの誰にもできない。あなたにしかできないの」
幸村……自分のことしか考えていないと思っていたが、私のことを、そんなに買ってくれていたのか。
すまない、とんだ誤解をしていたようだ。
私は大きく頷き、腰のベルトからコールドシュートを引き抜いた。
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