入院前夜

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酒を飲み、テレビを点け、好きなバラエティーアイドルが映る度にほの暗く喜んだ。よこたん。今日も可愛いね。暗闇は長く遠く、いつまでも明けない。まったく眠らないまま朝を迎える。振り返れば大したことは起こっていないが一晩は長い。ましてや一日は。それを繰り返していく。 ついに、アパートからゴミを出して降りる時に足を滑らせて転倒した。救急車で搬送された。前々からアルコール依存症と診断されて通院していた。だから生活保護という発想ができたのだけど、今回もその病院に通された。 「これはもう入院ですね」 「そうれすか」 呂律が回らない。酒が抜けない。同席した母ちゃんは情けない……とでも言うような顔をした。僕としては一点の曇りもなく恥ずかしくない。 「光浦さん、ちゃんと薬飲んでます?」 「あれ、飲むとめちゃくちゃ気持ち悪いれすね」 「酒飲んでるからでしょ」 「ああ、そっか……」 「とにかく、明日またここに来てください」 家中の荷物をまとめて入院した。入院するのは二回目だから眼鏡拭きとかヤスリとか定規だの持っていく。これが入院に役に立つのだよ。タラタラやってると遅刻してしまった。看護師がマスクをして仁王立ちしている。 「光浦さん、待ってましたよ」 「すみません、荷造りに時間がかかっちゃって」 「早速、診察します。注射するので」 看護師に荷物を預けて、診察室へ。特にお説教することもなく、注意事項だけ聞かされた。 「光浦さん、注射します」 「ああ。さっき聞きました」 「これは"WTC-2019"と言って、結構高い注射ですが光浦さんは生活保護なんでタダです」 「それって……抗酒剤ですか? 最近は注射になったんですね」 「いや、抗酒剤ではない。ワクチンみたいなものかな」
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