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わたしは、どうしても〝ゆーきくーうーん〟に会いたかった。どうしても、人間になってあの人に会いたかった。
わたしの足は自然と海に住んでいる魔女の館へと進んでいった。
「お、お邪魔します」
「なんだね。何の用だい。まず、名乗ってもらおうか」
「わたし、ルリって言うんですけど」
「ルリ? あの人魚の国の王様のお嬢ちゃんかい? ……何でも頼んでごらん。なーんでもど~うぞ~。」
「は、はい。(この魔女ったら人魚姫と分かった瞬間手のひら返したように優しくなったな)えーと、わたしを、人間にしていただきたいのですけれども」
「に、人間? まさか、あんた、人間に恋をしたんじゃないでしょうね」
「何でわかるんですか!」
「昔いたんだよ、あんたみたいなパッパラパーが。失恋して海の泡になったけれどね」
「ほんと……ですか」
「それだけのリスクがあるってこと承知してもらわないと困るね。でも、条件さえ呑んでくれれば人間にしてやらなくもないけどね」
「どんな条件ですか?」
「まず、その美しい声をわたしに貸してもらうよ」
「いやです」
「ケッ、何でだ! 魔女の交換条件だぞ!」
「声を失くしちゃったら、あの人に好きだって言えないじゃない。お願い。ほら、この首に掛けてある虹色の真珠あげるから」
「……よし、声は我慢するとしよう。」
「やったあ!」
「ただし、タイムリミットを設定しよう。三日間だ。あと、人間になったとはいえ人魚界での掟は守ること。自分の正体は明かしてはならない」
「わかりました!」
「よし。交渉成立だ。まずはその首に掛けてある虹色の真珠をよこせ」
「はいどうぞ。ほら、はやく人間にして」
「わかりました。お嬢様。」
ЬЁБГДШЖЙКЛФЮЭЫ!
と魔女は意味が分からない言葉を叫んだ。
すると、わたしの足はこれほどない痛みに襲われ、やがて光り輝きだした。痛みがなくなると、わたしの足は2本になり、魔女のように二足歩行できるようになった。
「あとは自分で海の向こうに行くんだな。わたしはもう何もせん。」
どうせならテレポーテーションの魔法をかけてくれてもいいのに、と魔女にケチをつけながら、それでも人間にしていただいてありがたいと思い、わたしは〝ゆーきくーうーん〟に会いに向かった。
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