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なんだか妙に視線を感じる。しかも、大学の掃除のおばちゃんに。
「結城くんってさ、大学のおばちゃんにじっとり見つめられてない?」
「あ、雪穂もそう思うんだ」
「あの人ってばおばちゃんたちの中では若くて綺麗な人だよね」
「そう?髪の毛であんまり見えないけど」
「あのさ、今度ゼミのみんなでカラオケ行くんだけどどうしよう……私音痴なのに」
「えっ、雪穂って歌うまくなかったっけ?」
「えっ、そんなことない、わたし音痴だよ。言ってなかったっけ?」
「じゃあ、僕が溺れていた時、助けてくれたのは雪穂じゃないの?」
「えっ、助けたっていうか、見つけただけだよ」
「雪穂が泳いで助けた訳じゃないの?」
「泳いでなんかいないよ」
「鼻歌歌いながらさ、僕を担いで泳いできたんじゃないの?」
「わたし、めったに歌わないよ」
僕はどうやら勘違いをしてしまったようだ。あの夜、僕を助けてくれたのは誰なのだろう。まさか、人魚だとか。いやいや、あれは伝説の話だし。でも。
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