プロローグ

2/2
1800人が本棚に入れています
本棚に追加
/372ページ
みんなが魔法を使える訳ではなく、その強さもそれぞれ違い、大勢の人間は生活に困らない程度の魔力があるだけで、それ故に強い力のある者は男性ならば王家に仕える事になるし、女性ならば良い縁談が待っている。 平民であっても強い魔力があれば縁組を持ちたがる男性は多い。 それもそのはずで、力のある人からは力のある子供が生まれる確率が高いとされていて、私の母もその力を期待され、辺境の男爵家から格上の公爵家へとお嫁入りしたのだ。 母は期待された通り、最初に見目麗しく魔力の強い男の子を産んだ。 6つ上の兄は強力な魔力を持っており、後継として将来有望、2つ下の妹は兄と同じく金髪に青い目、王族の特徴と同じ物を持って生まれており、魔力はそこそこであったが、治癒力は秀でた才能を小さな頃から発揮していて両親にも大事にされていた。 真ん中に生まれた私が召使いの様な扱いを受けているのは、私が微々たる治癒力しか持ち得ない、魔力のない普通の人間として産まれた事が理由として一つ、もう一つはその容姿にあった。 金髪でも青い目でもない…両親のどちらの要素も持ち得ない、銀髪に金色の目、この国でも珍しく、そして神聖国が建国される前の先住民族の髪の色として、神聖国では不吉とされている容姿を持って生まれたからだった。 この髪を持つ者は本来攻撃魔法よりも治癒魔法が強く出る特徴があり、祈りの力が膨大な為、神官として神殿に上がる事が多かった。 神殿ならば雑に扱われる心配もないので小さな頃に預けられる事が多い。 平民や商人の家に産まれた場合、不吉とされて棄てられる事が殆どで、神殿に連れて行ってくれれば良い方だった。 アリシアは貧乏とは言え公爵家で、貴族であるが故に体面を気にし神殿に預けられる事はなかったが、家の中の扱いは娘でもお嬢様でもなく召使いだった。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!