笑顔の面接。

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 俺は人を選ぶ側の人間だった。  実家は裕福で、家族は経営者や医者のエリート揃い。俺自身も、雑誌のモデル経験もある眉目秀麗で優秀な非の打ち所のない才色兼備。  僻みから『親の七光り』だと言われようと関係無い。俺に釣り合う人間だけを侍らせて、メリットのない奴とはつるまない。  常に選ぶ側、それが俺、神楽坂スバルだった。  そんな生来の傲慢さが許される環境下で小中高と過ごして来た俺は、プライドも自己肯定感もそれはそれは高く成長した。  そして大学生になり、周囲が就職活動に悪戦苦闘しているのを見て、それ位余裕だろうにと上から眺めていた。  何せ今までの人生、俺の行く手に苦労や障害は殆んどなかったのである。卒業後は代表取締役である父のコネで入社して、将来的にはその後を継ぐ。だから就活なんてものには縁もなく、興味もなかった。  けれど今まで周りに居た奴等が皆就活を始める様子を見て、ほんの少しだけ、興味が湧いたのだ。 「そんなにも難しいのなら、この俺が簡単にクリアしてみせようじゃないか!」  それは自身の力を示す為の手段であって、このスバル様に不可能は無いと知らしめる為で……決して疎外感からではない。……断じて、違う。 *******
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