呪い

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呪い

呪い……。    アビィの呪いとは、聞いてみれば単純なものだった。 「あの子の呪いわね、誰もアビィを助けようとしない呪いよ」 「え……?」 「考えてもみなさい……あの幼さで1人で泉を管理して、守っている……誰か1人でも助けたいとかなんで?みたいな感情を持たない?」  確かにそうだ……アビィはまだ幼い……そう誰か思っても不思議ではない。  アルテッサは更に続けて言う。 「それが100年、誰も思わなかったら変でしょ?」 「100年!?……本当に誰も思わなかったのか!?」 「そうよ……」  リックがアビィとアルテッサが100年もあの聖域にいることにもびっくりだが、誰1人とアビィを助けたいともどうしてでも思わないことにもびっくりしていた。 「だから、あなたがアビィを助けたいって言った時はびっくりしたわ……でもそう思っても次の日には思わないかもしれない……だから、半信半疑で今日来てみれば、リック……あなたはいるから、びっくりしたわよ」  アルテッサは昨日の時点では本当に来るのか半信半疑だった。  待ち合わせに指定した場所にリックがもしいなくても仕方ないと思っていたが、実際には木陰で寝ているリックを見て驚いた。 「そんな呪いが……でもなんで?俺は別になんともないぜ?」 「それが不思議なのよね……私でさえ呪いのせいでアビィを助けてあげる事が出来ないのに」 「そうなのか?」  アルテッサもまた呪いのせいでアビィを助けたいと思うことは出来るのだが、行動が出来ない。  助けようと行動すると体が動かなくなり、いつの間にか聖域に戻されてしまうからだ。  だが、リックは思うこと自体も奇跡なのに、更にここまで来た……つまり行動も出来た。  つまり、リックには呪いは効いてない……そうなることになる。 「だから、あなたにお願いがあるの……アビィをあの聖域から解放して……私はアビィに自由になって欲しいの……言わないけれど、アビィも自由になりたがってる」 「……俺に出来るのであれば」 「ありがとう……お願いね」  リックは改めて強くアビィを助けたいと思った。  100年もあの聖域に閉じ込められ、女神と言われ、人々を救って来た……アビィだって救われたてもいいんじゃないか。  そもそも、泉があるから人々はそれに頼り、それが元に争いも生まれ、消えていく命もある。  だから泉がなくなれば、それもなくなるのでは?とリックは思った。  そんな、思いもアルテッサに言うとまたしても驚いた顔をした。 「泉がなくなるなんて考えもしなかった……そうね……聖域の水のせいで消えていく命はたくさんいるのは知ってるからね」 「そうか……でも、アルテッサ……具体的に俺はどうすればいいんだ?」 「まずはここに向かって」  アルテッサは渡してきたのは地図だった。  リックはその地図を受けとる。 「この場所に何かあるのか?」 「以前、行こうとして呪いのせいなのか行けなかった場所よ……アビィを助けるなにかあるのかもしれない」 「分かった、行ってみる」  リックは立ち上がり、腕をあげ体を伸ばす。  アルテッサもまた立ち上がるとリックの方へと向くと頭を下げる。 「リック……アビィを助けて……お願いします」 「わわっアルテッサ、頭をあげてくれ……必ずアビィを助けるよ……約束する」 「ありがとう」
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