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11.
今日も今日とて、かずさがおやすみの日。いっしょに遊んでもらおうと思って出てきたミクは、おおきく肩すかしをくった。
かずさは家にいなかったのだ。
他の家人に見つからないように注意しながら家の中をさがしてみたけれど、やはりどこにもいないよう。
外に出て、しろの小屋の方へとむかう。
しかしそこでも、いつものようにしろがのんびりしているだけで、かずさはいなかった。
「しろ、かずくん知らない?」
問われたしろは、困ったようにミクを見るだけだ。
しかたがないので(?)、横臥するしろのふところに入り込む。
「いっしょに遊びたかったなー」
と、そのままそこで眠ってしまった。
「おい」
その声にハッとして目をさます。
「あんた、ここで昼寝するのやめなよ。いいかげんうちの親とかにも見つかるぞ」
かずさはふたりをのぞきこむようにして言った。
「かずくん……」
「しろだって迷惑だろ」
と、しろの背中をなでる。
「おかえりかずくん」
「ただいま」
「よかった見つかって」
「なに。おおげさだな」
「いないからさがしちゃったんだよ。今日、おやすみだったよね?」
「うん────だから、ハイキング行ってきた」
「ハイキング?」
「おみやげ」
そう言ってかずさは、ビニール袋をさしだした。
ミクが身をのりだして中をのぞくと、土がついたままの白い花が入っていた。
「これ──……」
「あってるかどうかわからんけど」
「あってる! と思う!」
「どこがどう必要なのかわからなかったから、土ごと持ってきた。必要なとこだけ持って帰って」
「うん。うん。ありがとう」
言いつのるかずさに、ミクは心底うれしそうに笑う。
満面の笑みだった。休みをつぶして山登りなどしてきた甲斐があったと感じる。
「まあ、そのあやしい薬の件、おれはまだ信じてないけどね」
「えー」
かずさは口ではそう言うものの、実際にわざわざ花を採りに行ってくれたのだから、ミクはとってもとってもとってもうれしかった。言葉にならない。
それはまぎれもなく、自分のために用意されたおくりものだ。
「あ。誰かにお花もらうの、はじめてかも」
「べつにそういうのでもないけど」
「うれしい」
「そう」
「帰ったらおばばさまにくわしい製法聞こー」
浮かれた様子でミクが言う。
「花、どうやって手に入れたって言うの」
「うーん、なんとなく?」
「それでいいのか」
「おばばさまには正直に話そうかな」
「うっかり人間と会っちゃったって?」
「好きなひとがいるってー!」
自分で言っておいてミクは、照れたようににっこりとする。
「ばーか」
そう言いながらかずさも、照れたように笑った。
「おれも好きだよ」
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