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4.
「アイスだー」
今日のかずさはワッフルコーンのアイスを持っていた。
「今日のおやつ。ちょっと高いやつ」
「いいな。ぼくにもちょうだい?」
「いいけど」
かずさは最初はワッフルの部分を折ろうとしたけれどあまりうまくいかなくて、すこし思案してから、指でクリーム部分をすくった。
「このくらいかな?」
「ありがとー」
ミクは差し出されたかずさの指を支えるようにして、そのかたまりを舐める。
「ミルク味?」
「うん」
「いいにおい。おいしい」
ひとすくいのアイスクリームは、思ったよりもすぐに残りすくなくなってしまった。
ミクはそのまま、かずさの指を舐めた。
「おれの指までなめるなよ」
「ふふ、おいしいよ」
また舐める。
「やめろって」
「他のとこも、なめてあげてもいいんだよー?」
「他って、なに」
「かずくんがなめてほしいとこ、どこでも」
と、意味深に微笑む。
「想像した?」
「しないよ」
「えー。してみて」
ちゅ、と音をたてて指を吸うようにしてから、かずさをじっと見つめた。
「ね?」
その碧い瞳にはあらがいがたい魅力がある。
「ビッチ」
「えー」
「淫乱」
「むずかしい言葉を知ってるね」
「──あんたさ」
「ん?」
「いつもこんなふうにするの」
「こんなふう?」
「売春、みたいだよ」
「むずかしい言葉、知ってるね」
はぐらかされたように感じて、かずさはすこし眉をひそめる。
けれどミクにはそんな気はなかったので、居ずまいを正してこたえた。
「してないよ。ヒトに会ったの、きみが初めてだもの」
「仲間は?」
「それこそしないよ。人間関係めんどうなことになっちゃうでしょ」
「おれは、よそものだからいいってこと?」
「ちがうよ」
「じゃあ、なんでおれにはするの」
「きみは、とくべつ」
「特別?」
「うん。かずくんとならほんとうにしてもいいと思ってるから、だよ」
「ねえ、ぼくがほかのひととしてたら、しっとする?」
「いや。ちょっと、違うかな?」
「えー。してよ」
「おれが、他のやつにはするなって言ったら、しないの?」
「うん。しない」
「まあ気をつけろよ。いろいろさ」
「だいじょうぶ。ぼくはかずくんとしたいだけだから」
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