E・C・A【エクスプルーシブ・チョンマゲ・アクション:爆発的丁髷活劇】

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E・C・A【エクスプルーシブ・チョンマゲ・アクション:爆発的丁髷活劇】

先程までの騒乱がまるで噓であったように、倉庫の中は沈黙に満たされていた。 「ヒロポン入り団子」を密輸入している悪徳業者の配下の輩どもは、(ことごと)く清輝の殺人丁髷、そして丁髷ブレードにより討ち果たされてしまったのだ。 そして、清輝の目の前にて呆然と立ち(すく)んでいたのは、その悪徳業者と思しき禿頭の中年男だった。 先程までの威勢の良さがまるで噓であったかのように、その顔を青ざめさせた禿頭の悪漢は只管に押し黙っていた。 重苦しい沈黙を破るかのようにして、凜とした清輝の声が高らかに響く。 「どうした、この腐れ売人! 随分と大人しくなったものだな。 その咎を悔い、神妙に腹でもかっ捌くか? 今ならば介錯して遣わすぞ?」 禿頭の悪漢は狼狽したかのような口調にてこう叫び返す。 「う…、うるせぇ! 調子に乗りやがって、この腐れ丁髷青大将! 手前なんざ…、鬢付(びんづ)け油でヌルヌルしていやがればいいんだよ!」 そう叫ぶや否や、禿頭の男はその(きびす)を返し、倉庫の出口へと脱兎の如く駆け去って行く。 彼の禿頭は、倉庫を照らす蛍光灯の寒々とした光をほんのりと反射していた。 逃げ行くその背中に向け、清輝の高らかな声が投げ掛けられる。 「はっはっはっ、さらばだ、腐れ禿! それはさておき、袖擦り合うも多生の縁と申すぞ! そうれ、餞別じゃ! 受け取れぃ!」 そして清輝は、その頭の左側の丁髷を手に取ると、溝鼠の如く逃げ去って行く禿野郎へそれを投げ放った。 放物線を描きつつ禿野郎へと迫り行く投げ放たれた丁髷。 鬢付け油をしっとりと湛えたその丁髷は艶やかに黒く、そして魅惑的なまでに美しかった。 迫り来る丁髷の気配に気が付いたのか、禿野郎は振り向き、迫り来る丁髷を思わずその手にて受け止めた。 それは、丁髷の艶やかな美しさに魅入られたが故の無意識的な挙動だったのかも知れない。 受け止めたその丁髷を左手で持ったまま、禿頭の男は乱暴に倉庫の扉を押し開き、闇の中と駆け去って行った。 開け放たれた倉庫の扉からは、お台場エリアから響く喧噪が夜風と共に忍び入って来た。 禿頭の男が駆け去る様を見送った清輝はフゥと溜息を吐く。 右手に携えた丁髷ブレードを元の丁髷へと復旧させる。 そして、元の姿に戻った丁髷をその頭へと戻した。 その視線を左右に巡らし倉庫を見遣った清輝だったか、何かを悟ったかのような慄然たる表情となった。 床へ倒れ伏していた、つい先程に清輝を危機から救った小娘の躯を抱き上げると、倉庫の出口目掛けて一心不乱に駆け出したのだった。 清輝が倉庫の出口から飛び出すようにして駆け出した刹那だった。 倉庫の床を突き破るかのようにして轟然たる爆炎が立ち昇った。 立ち昇った爆炎は、瞬く間に倉庫全体を覆い尽くして行った。 それは、あの禿頭の男が自爆スイッチを作動させた故であった。 岡っ引きなどに踏み込まれた時にヒロポン団子密輸の証を掴ませぬため、禿頭の男は倉庫の地下に自爆用のデミフレア・ナパーム(瞬間溶解焼夷弾)を仕込んでいたのだった。 そして、清輝の野獣の如き第六感は、倉庫の地下にて自爆装置が密やかに起動したことを察したのだ。 デミフレア・ナパーム(瞬間溶解焼夷弾)の燃焼温度は十万度にも達し、ヒロポン団子密売の証拠をその倉庫ごと灰も残さぬまでに灼き尽くした。
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