7人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の帳がネオお江戸の彩りを黒き帳の中へと覆い隠す中、その湾岸道路を一台の黒いオープンカーが疾駆していた。
オープンカーを駆るのは、その頭に在る三つの丁髷も艶やかなる鯔背極まりない男であった。
その男の名は伊勢屋清輝。
このネオ・令和の世に在って『丁髷好色一代男』とも渾名される男である。
そして、この清輝は「事件屋」である。
三つの丁髷を巧みに操って、ネオお江戸の夜の帳の下に蠢く悪党共を情けも無く容赦も無く撫で斬りにする憤怒の使者である。
其れのみならず、夜な夜なその艶やかなる丁髷で町娘共を誑し込んでは骨抜きにする、ある種の淫魔とも言えよう。
このネオお江戸の夜の帳の下には、清輝のことを想うて己の身体の火照りを慰めている女子共は星の数程に居るに相違無いのだ。
とある廃屋の傍に清輝はオープンカーを停める。
朽ち果てた廃屋なれど、そこからは悪しき企みの騒きが色濃く漂い出ていた。
清輝はその頭から丁髷を手に取る。
その丁髷はグンと伸びて刀の如き形状となる。
清輝は目にも止まらぬ迅さにて横凪ぎに丁髷を振り抜く。
丁髷からは真空波が放たれ、たちどころに廃屋を両断する。
幾多の悲鳴、幾多の断末魔、そして数多の怒声が響き渡る。
清輝はその顔に不敵な笑みを浮かべ、怒号の元へと疾風の如く駆け寄って行く。
清輝の頭上にて艶然たる黒き照りを湛える丁髷から眩き超破壊光線が放たれる。
廃屋はたちまちの内に爆炎に包まれる。
そう。
今宵も丁髷パーティナイトであるのだ。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!