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D•C•A【デス・チョンマゲ・アクション:丁髷死亡遊戯】
倉庫の中にどよめきが走る。
「お…、おぃ、どうしたって言うんだ?
しっかりしろ!」
清輝の後ろから響く声は明らかに狼狽の色を湛えていた。
打ちっ放しのコンクリートの床に倒れ伏した禿頭の男の傍に幾人もの男達が掛け寄ってくる。
その男達はいずれも禿頭だった。
倉庫の中に再び破裂音が響き渡る。
破裂音が響くごとに、駆け寄った禿頭の男達は呻き声を上げることも無いままに床の上へと倒れ伏して行く。
「てっ、てめぇ!
何かしていやがるのか?!」
清輝の後ろから怒声が響く。
その声音は怯えもまた孕んでいた。
「丁髷を嗤う者は……
丁髷にて、死す!!!」
清輝の凜とした声が倉庫の中に響き渡った。
それは、お白州にて奉行が申し渡す裁きの宣告のようにも思われた。
「く、くそっ!
この丁髷野郎、何かしやがったな!」
清輝の後ろから響く声は、今や狼狽に満ち満ちていた。
しかし、その声はすぐに落ち着きを取り戻したような調子へと変わり、こう告げた。
「まぁ、いい。
これからお前に超特濃の倍プッシュ・ヒロポンを注射してやるよ。
注射が終わったその瞬間から、お前はめでたくウルトラポン中だ。
ヒロポンのことしか考えられない身体にしてやるよ!
男妾にでもなってヒロポン代を稼ぐことだな!」
その声に応えるようにして、清輝の頭上にUAVが姿を表わした。
そのUAVの下面には、太い注射針が金属の光沢を煌めかせていた。
「さぁ、これからお前の月代にヒロポンぶち込んでやるよ!
覚悟しやがれ!」
清輝は折りたたみ椅子から逃れようとその身をくねらせる。
けれども、清輝をその椅子に縛り付けているガムテープが破れる気配は全く無かった。
「畜生!
畜生!
ちくしょうっ!!!」
焦りに満ちた清輝の叫びが倉庫の中へと響き渡る。
UAVはその注射針の先からヒロポンの雫を滴らせつつ清輝の頭上へと迫り来る。
清輝の背後から哄笑が響き渡る。
「はっはっはっはー!
その倍プッシュ・ヒロポンはな、1滴でも注入されたら、例えシロナガスクジラでもポン中になってしまう程のヤバいブツだ!
さらばだ、丁髷野郎!!!」
そして、注射針の切っ先が清輝の月代に達しようとしたその刹那。
一人のうら若き小娘が倉庫の一角から清輝の傍へと掛け寄って来た。
そして、折りたたみ椅子もろとも清輝を打ちっ放しのコンクリートの床へと押し倒す。
「ガシャン!」という音が倉庫の中に谺する、
一瞬の沈黙の後、困惑したかのようなどよめきが響き渡る。
「お…、おい、トメ!
てめぇ、一体何の積もりだ?!」
トメと呼ばれたその小娘は、その怒鳴り声に応える事無く懐中から肥後守を取り出した。
そして、その切っ先を清輝を縛り上げているガムテープへと突き刺し、ビリビリと切り裂いていく。
縛り付けられていた清輝の手が、そして足が解き放たれていく。
清輝は解き放たれたその右腕を素早く小娘の胸元へと滑り込ませる。
小娘の胸元に差し込まれた清輝の右手は繊細かつ大胆に蠢き、その胸の膨らみを弄ぶ。
小娘はその顔を赤らめ、切なげな喘ぎ声を上げる。
そして、その身体を細かく痙攣させた後、まるで糸の切れた懸糸傀儡のようにしてその場へとしゃがみ込んだ。
後に小娘ことトメはこう語った。
折りたたみ椅子にその身を拘束され、頭上に肉薄しつつあったUAVから今まさに倍プッシュ・ヒロポンをブチ込まれようとしていた清輝。
そんな清輝の頭を彩る丁髷を見ているうちに、身体がじんわりと火照ってきたと。
その火照りに促されるかのようにして、清輝の傍に駆け寄ってしまったと。
それからは無我夢中だった。
そして、清輝にその胸元を弄ばれているあの刹那、小娘の脳裏には数多の丁髷に身体中を愛撫されているビジョンが浮かんでいたのだった。
未だ嘗て感じたことのない興奮と快感の奔流の中にて、トメは敢え無く絶頂に達した。
清輝は小娘の胸元からその右手を引き抜き、意識も絶え絶えとなった彼女の耳元にてこう囁いた。
「手助け、実に大儀である!
後に懇ろに相手して遣わす故、今暫く待たれよ!」
小娘は潤んだ瞳で清輝の顔を見上げて小さく頷いた。
そして、意識を失いその場へと倒れた。
「おぃゴルァ!
何、乳繰り合い始めていやがるんだ!
もう絶対に許さんぞ!
二人まとめてブッ殺してやる!」
清輝の背後から響くその声は怒りに震えていた。
しかし、その声の響きが消え失せぬ内に破裂音が何度も響き渡る。
倉庫のあちこちから人が床へと倒れ伏す音が響いてくる。
「てっ、てめぇ…
もしや、その丁髷は…!?」
清輝の背後から響くその声は、今や怯えに満ち満ちてた。
清輝は高らかな声にて答えを返す。
「一介のヒロポン売人にしては実に誠にご明察!
冥土の土産に聞かせてやろう!
俺のこの丁髷は殺人丁髷!
逆らう者は皆殺し!
丁髷を馬鹿にするものには死の裁きを下す、幕政復古の申し子なり!」
今や、倉庫の中は静寂に満たされていた。
まるで清輝の放つ気迫に気圧されるかのようにして。
沈黙を破るようにして、清輝は高らかにこう叫んだ。
「丁髷を嗤う者は、
丁髷にて死す!!!」
そして、再び破裂音が響き渡り、倉庫の何処かにて床に倒れ伏す音が響く。
清輝の月代を飾る三つの丁髷のうち真ん中のものから仄かな白煙が立ち上っていた。
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