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アンジェラ
アンジェラはアゴで星に命じた。
「ハイ……」すぐに星はタブレットを操作し画像を提示した。
「チッ、何を見せる気なんだ?」
オレは舌打ちをして画像を見つめた。
どうせくだらない画像かと思ったが、思いもよらないモノが映っていた。
「えェ……?」まさか。
その画像には美波が頭に包帯を巻いて、ベッドで横になっている姿が映し出された。
「まさか……?」
どうして美波が病院のベッドで横になっているんだろう。
「フフ、どうしました。良かったですね。山田美波さんは軽傷で済みましたよ」
「け、軽傷……?」
「ハイ、あなたが美波さんを突き落とした直後、竜巻が起こったんですよ」
指先をクルクルと回し上へ押し上げるようなジェスチャーをした。
「なにィ、竜巻が?」
「そうです。その竜巻に乗って美波さんは吹き飛ばされて、運良くトラックの幌付きの荷台に落ちたんです」
「まさか?」
「ええェ、奇跡的に美波さんは軽傷で済みました。先ほど私たちが病院へ搬送したんです」
「お前らが?」
「ええ、良かったですね。海野ツキオさん」
「良かった?」
「そうですよ。あなたは竜巻のおかげで殺人犯にならずにすんだんですよ」
「はァ……?」
「ツイてますね。奇跡が起こったんです」
「フフ、奇跡ねえェ」確かにそうなのだが。
オレは自嘲気味に笑い、ガックリと膝から崩れ落ちた。
「どうです。残りのピザを食べませんか?」
「えェ……?」
「ほらァ当分、ピザなんか食べられませんからね。ハイどうぞ」
「ぬうぅ」仕方なくオレはピザを口にした。多少、固くなっていたが美味しかった。
「フフゥン……」
竜巻に注意か。まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
どうやらオレは最後まで海野ツキオだったようだ。
今夜は忘れられない特別な一日になった。
THE END
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