特別な一日

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特別な一日

 ついにオレは完全犯罪をやってのけた。  オレにとってになるだろう。  今でもドキドキして全身が震えてくるようだ。これまでオレは運に見放されてきた。  しかし今回は違う。オレの計画は完ぺきだった。この忌々(いまいま)しいデカ天使が現れるまでは。  オレの名前は海野次生(うんのツグオ)。当然、学生時代のアダ名は『ウンのツキオ』だ。アダ名の通りこれまではツキに見放されてきた。  それなりにイケメンで中学生の頃からモテモテだった。  ある夜、ヤンキーの美少女から逆ナンされ彼女の部屋でベッドへ誘われ、抱き合った瞬間、運悪く彼氏が部屋に顔を出した。  彼氏は怖持(コワモ)てでマッチョな金髪ヤンキーだった。  それに対してオレの方は腕に自信がない。まさに色男金と力はなかりけりと言うヤツだ。案の定、彼氏の怒りを買いボコボコにされ、そのまま病院送りになった。  まったくアダ名の通り(ツイ)ていない。   そんなオレにもようやく幸運がめぐってきた。邪魔な彼女は排除した。  これで何も怖いもの無しだ。なんの気兼ねもなくフィアンセと結婚できる。  オレには三年前から付き合っている女がいた。山田美波と言うごく普通の女性(おんな)だ。  見た目は、美人の部類(たぐい)だろう。スタイルも申し分なく料理も上手いし相性も良い。はたから見れば何ひとつ文句のつけようがない美女と言えるだろう。  さらに気前よく金もくれるので付き合っていた。都合の良い女だ。まるでジゴロのような生活を送ってきた。  ふたりの関係は三年以上も続いていた。今では腐れ縁と言って良い。しかし近頃、美波は結婚もほのめかしてきた。そろそろオレも観念すべき時がきたのかもしれない。  だがそんな俺にも生涯で初めてのラッキーチャンスが舞い込んだ。  酔っぱらいに絡まれていたお嬢様を偶然、オレが助けたと言うワケだ。  彼女の名前は西園寺マリア。名前の通り資産家(セレブ)でお嬢様だ。西園寺家の総資産は天文学的だという(うわさ)だ。  おまけに美人でスタイルも抜群だ。  ふたりは運命的な出逢いと言って良い。彼女が酔っ払いに絡まれているのを身をていして守ったのが出会いだった。  多少、ケガを負ったが不幸中の幸いのようだ。彼女はオレに好意以上のものを持ってくれた。学歴もコネもないオレにとって、まさに千載一遇のチャンスだった。   熱烈に愛し合い、ついに婚約までこぎ着けた。  当然、俺は『独身で彼女もいない』と嘘をついている。何しろ最初で最後のビッグチャンスだ。つまらない過去で逃す手はない。  西園寺マリアに比べたら山田美波など粗大ゴミのような存在だろう。  だが美波は素直に別れてくれそうにない。しつこい女性(おんな)だ。下手に捨てると一生涯(いっしょうがい)オレにつきまとってマリアとの結婚を邪魔するかもしれない。手遅れになる前に芽をつんでおいた方が良いだろう。  そこでオレは彼女を自殺に偽装(みせ)かけて殺す計画をたてた。  嵐の晩、彼女をドライブへ連れ出し睡眠導入剤で眠らせ、そのまま岬の突端から突き落とした。これで邪魔者は居なくなった。  オレと美波の関係は極秘なのでわかるはずはない。何もかも上手くいくはずだった。  そう、あの女。  デカ天使アンジェラと言う厄介な美少女(おんな)が現れるまでは。
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