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嵐の夜
地鳴りのような雷鳴が轟いた。各地で竜巻が発生するような悪天候だ。
俺は美波を始末したあと車で帰宅途中、ラジオでニュースを聞いていた。
『……三浦半島から上陸した台風による竜巻が発生しました。付近の方は充分、注意なさってください』
さかんに女子アナが注意喚起を促していた。
「フフゥン、なにが竜巻だよ。そんなもの注意してどうにかなるのか」
オレは興奮のあまりハイになっていた。
この近辺でも巨大な竜巻が発生しているようだ。
しかし今の俺には関係がない。邪魔者は片づいた。気分は上々だ。
家へ着きドアを開けると計画通り、玄関にはデリバリーした宅配ピザが置いてあった。香ばしいピザの匂いが漂ってくる。
「フフ……」
いつものように、玄関マットの下には現金三千円の代わりに領収書が置かれてあった。ここ二、三ヶ月、この時間、宅配ピザをデリバリーしてもらっていたので間違いない。
毎晩、繰り返していたので慣れたものだ。
これで万が一の時のアリバイはバッチリだろう。オレはその領収書を手に取り微笑んだ。もし疑われてもオレはずっとこの家にいたことが証明されるだろう。岬まで行って山田美波を突き落とすことなど出来はしない。
オレはすぐにバスルームへ行きびしょ濡れの服を洗濯機に突っ込んだ。
新しいTシャツに着替えリビングへ戻った。
「ふぅ……」
テレビをつけソファに腰掛け、ゆっくりと寛いだ。すでに十二時は回っている。
おそらく夜が明けた今日じゅうには美波の遺体も発見されるだろう。
身よりもない美人が自殺するくらい珍しくもない。身投げとして処理されるだろう。
これで心置きなく西園寺マリアと結婚できるのだ。もはや恐れるモノは何もない。
「フッフフフ……」
自然に笑みがこみ上げてきた。
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