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デカ天使
リビングでソファに腰掛け寛いでいると無性に腹が空いてきた。そういえば、緊張して昼からろくなモノを口にしていない。無理もないことだろう。曲がりなりにも愛していた美波の命を奪ったのだ。起きてから栄養ドリンクとアイスコーヒーしか飲んでいない。
「ああァ、そういえば玄関にピザが置いてあったな」
すっかり冷えているが食べれなくはないだろう。
おもむろにオレは立ち上がり玄関へ向かった。その時、不意にインターフォンが鳴り響いた。
「ン……?」誰なんだ。こんな真夜中に。
ピザの他にデリバリーを頼んだ覚えもないし、来客の予定もない。
オレはドアスコープから外の様子を伺いながら用心してドアを開けた。
「こんばんは」
いきなり見ず知らずの中学生の女の子が元気いっぱいに挨拶してきた。アイドルみたいに笑顔を振りまいてキュートな美少女だ。
隣りには保護者のように若い男性が立っていた。困ったように苦笑いを浮かべている。
「はァ……?」いったい何の用だろう。
こんな真夜中に予約も取らず家へ押しかけてくるなんて。ずいぶんと不躾な女の子だ。見た目は可愛らしいが頭の方は悪そうだ。
「フフゥン、海野ツキオさんですね」
美少女は何の屈託もなく笑顔で訊ねてきた。あどけない少女のように真っ直ぐな眼差しだ。
「えェ? いやァ、オレは海野次生だよ。ウンのツキオじゃない」
なんなんだ。この女の子は。失礼な子だ。
バカみたいにニコニコ笑いやがって。無性に腹が立ってきた。
「ハイ、じゃァ、海野ツキオさん。夜分遅く申し訳ありませんが、これからご一緒に警察の方へいらっしゃって貰えますか?」
「な、なんだよ。ヤブから棒に……。ご一緒に警察ッて」
この子は本当にバカなのか。なんでこんな真夜中に警察へ行かなければならないんだ。
「あ、申し遅れました。私はデカ天使アンジェラです」
一応、美少女は警察手帳を提示した。
「な、なにィッ、デカ天使アンジェラ?」
なんだ。それは。まったくわけがわからない。何かの漫画か、アニメキャラクターなのだろうか。それとも時期外れのハロウィンなのか。ひと目見た様子では本物の警察手帳のようだ。
「こっちはポチです」
アンジェラは隣りにいるイケメン男子を紹介した。
「ポチ?」
「あ、いえ、ポチではありません。星です。星カケルと申します」
「はァ……、星さんですか?」
「ハイ、ボクたちは神奈川県警の者です。夜分、恐れ入ります」
若い男性は警察手帳を提示し丁寧に頭を下げて自己紹介をした。
「ぬうぅ、神奈川県警?」
かすかにオレは眉をひそめた。
どうして、こんなにも早く警察が家を訪ねて来るんだろう。こんな真夜中に嵐の中を。
「フフッ」
目の前の美少女はニコニコと愉しげに微笑んでいた。まさに天使のようにキュートな美少女だ。
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