デカ天使

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デカ天使

 目の前の美少女はニコニコと(たの)しげに微笑んでいた。まさに天使のようにキュートな美少女だ。 「ぬうぅ、こんな嵐の晩にいきなりやって来て何なんの用でしょうか」  しかしオレはふて腐れたように()いた。これ以上、彼女らをまともに相手をしていられない。  だが美少女は細かいことにはとらわれないタイプのようだ。 「フフ、美味しそうな匂いですね。あ、ピザだ。お腹ペッコリーナ姫なんですゥ」  舌なめずりをして玄関に置きっぱなしのピザの箱を見つけ手を伸ばした。 「な、何をしているんだ?」  いきなり真夜中、他人の家へ来て宅配ピザを食い出すつもりか。 「わァ、美味しそう。遠慮なくいただきまァす」  勝手にアンジェラはピザの箱を(ひら)き、大きく口を()けて食べ始めた。 「おいおい、ふざけるな。遠慮なくッて(なん)なんだよ。キミィ、保護者ならこの不躾(ぶしつけ)な女の子を何とかしろ」  オレは脇にいる星とか言う刑事を指差して命じた。 「は、はァ、そうですね。ちょっとアンジェラ!」  けれども星も困惑ぎみだ。 「ウッフフ、やっぱりピザは美味しいですよ」  アンジェラは何の気兼ねもなく嬉しそうな顔でピザを食べている。確かに美味しそうだ。 「お、おいアンジェラ。他人様(ひとさま)のピザを勝手に食べるなよ」  慌てて星もアンジェラに注意した。 「でもほらァ、ずっとピザを放っておくから。すっかり生地(きじ)がパリパリで固くなっちゃってるわ」  アンジェラは食べながら文句を言い出した。 「ぬうぅ、何を言ってるんだ。そんな文句を言うなら食うなよ」  オレも声を荒げて注意した。 「フフ、ほらァ、海野さんもお気づかいなく一緒に食べませんか?」 「うるさい。オレのピザだろう。気づかいなんかするか。お前らが出ていったあとで食べるから(ほう)っといてくれ」 「フフゥン、じゃァ、コーラもいただきますね」  また図々(ずうずう)しくアンジェラはコーラにも手を差し伸べた。 「ぬうぅ」なんて子なんだろう。まるで旧知の仲みたいに呆れるくらい()れなれしい。 「ああァ、コーラも少しぬるくって、あんまり美味しくありませんね。氷もそっくり溶けちゃってるしィ」 「はァ、知るか。なら飲むなよ」  どんな神経なんだ。この子は。 「海野さんが岬まで行って、山田美波さんを崖から突き落としているからピザもコーラも不味(まず)くなっちゃったんですね」 「な、何だとォ、ふざけるな。何を言ってるんだ」  なぜだ。山田美波の事をなんで、この女の子は知っているんだ。  イヤな予感がしてきた。
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