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それは、仙台駅前にある旅行会社の窓口を訪ねた帰り道だった。
洋治は、その日の朝、新聞の折り込みチラシの『ミステリーツアーへのご招待』という案内に目をとめた。
■二泊三日のツアー。行先は当日のお楽しみ。仙台駅をバスで出発。その後おしゃれなクルーズ船で絶景の島へ。360度の自然を満喫、心もすっきりリフレッシュ!。……夜のお泊りはリゾート温泉宿。山海の恵みをこれでもかとそろえた絶品コース料理。……五感で生きる喜びを実感する三日間。今の日常にどこか物足りなさを感じているあなた、ありきたりの毎日の繰り返しに新鮮な風を送り込み、明日へのエネルギーを充填したいあなたにピッタリの旅です。
そんなチラシの文面が、今の自分のことを指摘している気がした。
独り暮らしで最低限必要なことを日々繰り返すだけの生活は、変化もメリハリもない。仕事も若い頃の情熱は冷め、今は毎日惰性で仕事場に通うようなところがあって身が入らない。
これも、妻との関係を何となくあいまいにしながら中途半端な状態を続けているせいだということはわかっていた。しかし、それを打開しようと、一歩を踏み出す勇気が湧いてこないまま、ズルズルと日にちを重ねていた。
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