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洋治は、旅行会社を後にすると、自宅へ戻ろうと電車に乗り、最寄りの駅で降りた。
変化のない毎日を送る洋治にとって劇的と言える決断をした自分に、そしてこれから出発の日までカウントダウンをしながら準備をする日々を想像して、久々に興奮する気持ちを抑えきれなかった。
しかし、そのために周囲に対する注意が少し欠けてしまったのが災いを招くことになった。
青信号に変わったのを見て歩道に踏み出したところに、右脇から車が突進してきた。
一瞬のことに、車に目を向けたが避ける余裕などなく、咄嗟に足を止めた洋治は、激しい衝撃を身体に感じた。
スローモーションのようにビルや空が回転するのを見ながら、そして、最後にアスファルトの生温かい感触を頬に感じながら、それでもツアーに行きたいのにこんなことしている場合ではないなどと思いながら、視界が薄れていくのを感じた。
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