2 旅の始まり

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 しかし、連れていかれた警察の別館だという建物で、本人確認と形ばかりの短い聴き取りらしきものを受けると、すぐに移送車に押し込まれた。  その後、どこをどう走っているのかもわからないまま小一時間も車に揺られると、開けられた扉の外から、ここで降りるようにと黒服に指示された。  言われるままに降りた目の前には、小さな港があった。  洋治は、そこに停泊している小型のクルーズ船らしきスマートな船に乗るよう促され、辺りを確かめる間もなく船内の部屋に連れていかれた。  部屋に入ると、そこにはベッドが一つ備え付けられていた。個室らしい。   ベッドはかなり柔らかそうな上質な類のものに見えた。さらに、椅子とテーブルが置かれていて、脇にはちょっとしたカウンターが設けられ、ガラス棚の中に、おつまみのような品々に加えてお酒まで入っていた。冷蔵庫もあり、開けると飲み物や簡単な食糧が詰め込まれている。  これはどうしたことかと理解に苦しみ、扉の外にいる監視員に声をかけた。 「すみません。この部屋に、何でこんなにいろいろ食べ物や飲み物が揃っているのでしょう。私はここでどうしていたらいいんでしょうか」 「部屋のものは自由にしていいそうです。詳しいことは目的地に着いたら説明があります」  監視員には、これ以上聞いても仕方がなさそうだ。洋治はため息をつくと、部屋に置かれた椅子に腰を掛けた。
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