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 ロゼッタ邸は王都の貴族街の比較的中央に近い区域の端にある。  まあ爵位が男爵ではあるが領地のない宮廷貴族、いわゆる文官でも図書館長というシルフィーの父の立場は現代的に言えば公務員。  公務員宿舎が無い代わりに王城近くに居を構えさせておいて毎日出勤させる為に便宜を図っているんだろうとオバちゃんは勝手に思っている。  庭はなく歩道に面した階段を上がるとすぐ玄関がある3階建の洒落た外国のアパルトマンのようなレンガ造りで、玄関周りに蔓薔薇のアーチとかあって、オバちゃんは見上げるたびに洒落てるなあ~・・・と感心するのだ。  猫の額のような土地に3LDK5人暮らしだった生前と比べれは家族は3人――使用人は通い――で部屋が6つあり、キッチンも広く3点式ユニットバスでもないので十分贅沢な豪邸である。まあ、貴族感覚ではあんまり広くは無いらしいが。  そのロゼッタ邸の前に今日は黒い軍馬に乗った人物がやって来た。  さらりとしたヘイゼルの髪に、蒼い瞳。  ガタイは冒険者か木こりか、パン屋のオヤジ並みにガッチリ系の長身の男。  そう読者諸氏ならピンと来る彼、シルフィーの想い人であるベイジル・シルベスタ・フォーゼスト将軍その人である。  誕生日のプレゼントは『デート』というシルフィーのお願いを叶えるために彼女の家まで迎えに来たのである。  若干顔が引き攣ってるのは、多分気の所為という事にして両目を瞑っておいてやって欲しい・・・・  『デート』に慣れてない非モテ男子はそんなもんである。  
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