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さんざん玄関前で迷った後で、やっとこ意を決してドアノッカーに手を伸ばすベイジルを軍馬も呆れ顔になりそうだが辛抱強い彼は尻尾を揺らしているだけで別に急かしていない。
が、段々退屈になって蹄を歩道に当てては、カツカツという音をさせている・・・
「待て、イオ。心の準備が・・・」
イオと呼ばれた黒馬は、ベイジルが腕に抱えたピンクの薔薇と白いかすみ草のブーケに鼻面を寄せて、黒い瞳で主人をじっと見る。
――うん、やっぱり急かしているかも知れない・・・
そして通りを挟んだ向かい側。
「おい、押すなジジイ!
!」
「ホッホッホ、小賢しいわ若造が」
「2人共、黙らっしゃい。旦那様に気付かれたらどうするんですか?」
建物の横にある木の陰から見守る双子の爺さん達と、壱番隊隊長カシスの姿・・・
3人は団子になってわちゃわちゃとやっている。
「はよ、はよノッカーでドアを叩けってば・・・」
「そう云うな旦那様は、初心なんじゃ」
「しかし、イオにまで急かされておるぞ。いい加減腹を括れば良いと思うんじゃが・・・」
お節介? 3人組。
――仕事はどうした?
あ。土曜日で公休ですか。成る程。
「爺共何か言ったか?」
「いいや?」
「そういえば何か言われたような・・・」
「「「?」」」
・・・気のせいである。
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