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 気づけば、オバちゃんの眼の前には大きなカフェ・オ・レボウル。  生前? 大好きだったフランス製だ。  口縁がぽってりと厚みがあり、乳白色で優しげな黄色とはっきりした青の花の絵があしらわれていて、可愛くて買ったはいいが口径が16センチもあり本来の目的ではなくフルーツ入れとしてよく利用したという、いわく付きのやつだ。  それに湯気の立つカフェ・オ・レが注がれていて、さあ飲めと言わんばかりにデデンと置かれている。  これを飲むと絶対にお腹が張って後から苦しむやつだよな、と遠い目になるオバちゃん。 「さあ、飲め。一気にとは言わん。チビチビでいいぞ~」  真っ暗い中、白い丸ちゃぶ台に向かって座るオバちゃんに声が掛かる。  一体誰よ、と辺りを見回すが暗闇が広がるだけで誰も居る様子はない。 「ここ、一体何処よ?」  シルフィーの中で眠るときはいつもテレビの電源が切れるときのようで一瞬で意識がなくなる感じで、どこかの空間に居る、という感覚は無いのだ。  目覚めたときは視覚を共有していて、身体はシルフィーのモノを意識する。  ただ、シルフィー主体のときは思考の片隅にオバちゃんという存在をシルフィーが感じ取っていて、オバちゃん主体になると真逆になるといった感じなのだ。  だからこういった空間をまわりに感じるという事自体が異常なのである。 「おっかしいなあ・・・」
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