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「君の言いたいことは解るさ。僕だって身の置き場が無くなるなんて困るからね」
実に嫌そうにその秀麗な顔を歪めると、肘をついたまま続ける第1王子殿下。
「だとしても、不確定要素の多い未来のために国民、しかも貴族のご令嬢を拘束することなんて事は出来ないよ」
溜息を付きながら、青い双眸を閉じるフォボス王子。
「彼女は確かに4年前の魔獣発生で叔父上に助けられているが、光魔法の発現はなかったと報告にはある。また、魔獣の血による脚の怪我も一生残る可能性があるという診断も出ている」
ウンザリとした顔で肘を付くのを止めて、肩を竦める王子。
「僕達はあの事故を防ぐことも出来たのに、其れを怠った。そして彼女は一生残る傷を負ったんだよ?」
「それは仕方ないじゃないの。光属性の魔法が発露すればすぐに魔獣による火傷は治るはずだったのに、あの子が気を失って発動しなかったんだから」
睨むように黒い瞳を向けながら、口元を扇で隠す公爵令嬢。
「だけど、王都で魔獣の被害が起る予定のポイントを僕達は、分かってたんだよ? 被害を出さないように務めるのは、当然だろう? 其れを怠ったんだよ? 君には良心の呵責っていうのが無いのかい?」
王子の言葉を聞きながら扇の向こう側で涼しい顔をしていたディアドラだが
「そんな訳ないでしょう」
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