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「え~と、じゃあ実家(神殿)に1度帰って聖女に関する文献がないかを探せばいいってことですよね?」  気乗りしなさそうな声で、返事をするハーバル・セジュール。 「そうだ。もう時間があまり無いんだ。神殿に直接申し込んでいたら時間が足らなさすぎるんだ。魔素溜まりの影響が王都の郊外の森にまで及んでいる」  王宮魔道士達や神官達も昼夜問わず頑張っているらしいが、影響を押し止めるには至らず少しずつ範囲を広げている。  現在混乱を避けるために情報は開示されていないが、王都の住民達も少しずつ自主的な避難を始めたらしい。 「聖女の御業と浄化方法の文献かぁ・・・あったかなぁ・・・」  首を捻りながら執務室を出て行くハーバルと入れ違いにやって来たのはアインスである。 「殿下、ハーバルはどうしたんですか?」 ×××  ここは王城の王子に与えられた執務室。  あの後、箝口令は敷かれたままだが学園は休校となった。あまりにも魔素溜まりの拡大が早すぎる事が原因だ。  新入生歓迎パーティーとか言ってる場合じゃなくなったのである。 「王城図書館の資料を調べましたが、やはり聖女を贄にするとしか書いてありませんね」  アインスは溜息をついた。 「聖女を王子の伴侶にする事と矛盾しているとしか思えません」
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