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「だろう?」
アインスのその言葉を聞いてニヤリと笑いそうになるのを堪え真剣な顔をするフォボス王子。
「ええ、王族にもし王子が1人しか居なければ、その聖女は王太子妃ですからね」
そう言いながら彼は首を傾げる。
「王族として名誉を賜らせてから贄にするとか・・・ 民衆の反感を買うに決まってますから。調べましたがそもそも聖女は下位貴族か平民にしか現れていないんですよ」
「そうなのか?」
「高位の貴族や王族で聖女になった者は調べた限り1人も居ませんでしたね」
「そこまで調べたのか?」
「ええ。これはおかしいと思いまして。性格上おかしいと思ったことは突き詰めないと気がすまないので」
そうだった。
コイツはそういう男だったなと我慢していたのを忘れ、つい満足気にニンマリ笑うフォボス。
「殿下の仰る様に何らかの形で聖女に関する資料が隠蔽されたとしか思えませんね」
そう言いながら、アインス・ナザレ侯爵子息は銀縁眼鏡のブリッジを人差し指でツイッと上げた。
――流石は未来の宰相候補だな
と。
思わず感心した。
「整合性のない事は受け入れられません」
真面目くさった顔をするアインスを、頼もしいと思ったフォボス王子である。
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