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 当時の資料では、明確にはされていないが本来第1王子の婚約者は内定していたらしく見つかったという聖女は平民、しかも孤児院で暮らしていた少女で6歳だったらしい。  急遽その少女を男爵家の養女にして、下位の貴族のマナーを身に付けさせ次に伯爵家の養女に、最後に侯爵家の養女にさせた後に貴族のマナーを10年かけて完璧に教え込み16歳でデビュタントを迎える事になる――当時は貴族の教育は男女共に各家に任されており、貴族の学園等は存在しなかった。  下位貴族と上位貴族のマナーの差は大きく、更に平民と貴族との差は目も当てられぬほどの差異だったためそういった教育方法を取らざるを得なかったと資料には記されていたと、アインスはフォボス王子に説明しながら眼鏡のブリッジを指先でくいっと上げた。 「その間に預かった各家同士で起こったのが困ったことにその聖女の争奪戦です」 「はぁ?」 「特にその家の子息達の争いは決闘騒ぎになったようです」 「・・・馬鹿なの?」 「さぁ? 王命で預かった筈の養女に手出ししちゃいけないってわからないのなら確かに馬鹿でしょうね」  アインスが呆れたように鼻を鳴らした。
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