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時間は少しだけ遡る――
「涙かぁ・・・」
魔塔の一室でシルフィー(中身オバちゃん)以外の全員が困り顔になった。
「聖女の涙を試すにしたって、シルフィー嬢が涙を流す必要があるんだろう? どうやって?」
王子がうう~んと首をひねる。
「悲しくもないのに泣けないわよねぇ」
ディアドラも情けない顔をしたがもっと情けない顔・・・というより不穏な表情をしているのは勿論ベイジル閣下だ。
自分の最愛を泣かすような存在など木っ端微塵にしそうな顔である。コエエ。
「何かいい方法は無いもんかのう・・・」
「あら、シルフィーが涙を流すのなんか、日常茶飯事よー。こないだも散々泣いてたわよ?」
「「「「?」」」」
「プィリジキ(ピロシキ)作ったじゃない? あの時も凄かったじゃん」
『あああぁ・・・玉葱の微塵切り・・・』
「「「「?」」」」
×××
てなわけで。
ロゼッタ邸の台所に大量の玉葱が届き、今現在必死でシルフィーが微塵切りをするという作業に至った訳である。
この後何らかの料理に使われる事になるのだろうが、今は微塵切りだが先程まではオニオンスライスだった・・・
シルフィーが聖女だと周知されたくないので、涙の回収はワイプが魔法で宙に浮かせ硝子の試験官に浮遊魔法で運び、それに手作業でディアドラが蓋をする事に決まったのである。
「しかし、まぁよく思いついたもんじゃのう」
ワイプは感心するが
『私が寝てると玉葱を冷やすの忘れるのよねシルフィーって・・・最近甘いお菓子よりミート系のおやつを作るから涙流すのなんかもぅほぼ毎日よ』
「なるほどのう。騎士団への差し入れか」
「トホホ・・・」
「??」
オバちゃんの声に納得するワイプと、肩を落とすシルフィー。
そしてオバちゃんの声は聞こえないのでキョトンとするディアドラ嬢である。
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