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死神代理と汚部屋のお掃除 分別など編 18
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ワタシがしてしまったことは、その当時のワタシにはそれしか方法がなかった。
責任はワタシにだけあるんじゃないと、パポちゃんは言いたいのだ。
家族の輪からワタシが離れた本当の理由は両親に心と体を傷つけられたからではなく、お父さんとお母さんの中にワタシの存在など欠片もないと分からされたから。
姉が病弱なことで、二人の子を喪った過去を持つ両親は姉まで居なくなるのを恐れ、体の弱い我が子の方ばかり見てワタシに心を砕いてはくれなかった。
家族が崩壊した原因、責任は皆にあったとも言える。けれど、家族それぞれに責任を分配した場合でも、圧倒的に悪いのはワタシである。
ワタシさえ我慢すれば、いまも家族は続いてた。
「ワタシが赦さなかった。それが一番悪いことなんだよ」
「…家族を、恋人を赦してあげられなかった。そんなワタシがやっぱり悪い」
自分の気持ちを堪えるのは生まれてからの10年間で慣れ続けていたのに、両親と恋人に対してはできなくて。拒んで傷つけておきながら、自分の行いに自己嫌悪して脱け出せないでいる。
ワタシの心は、何て半端で醜く弱いんだろう。
「パポちゃん、ごめんなさい」
パポちゃんの目のふちに溜まっていた水の膜がみるみる量を増して、揺れて重力に逆らえずに頬を伝い垂れていった。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
小さな両の手で顔を覆い、パポちゃんは声も出さず静かに泣いた。肩を体を震わせ啜り泣く。
触れようと手を伸ばしたが、触れられずにワタシはそれを宙にさ迷わせた。
どうしたらいい。どうすればいいのだろう。
「泣かないで、パポちゃん。お願い、ワタシのためになんて悲しくならないでよ」
思わず言ってしまった言葉に、パポちゃんは手を除け怒りの顔を顕した。
「…ワタシのためになんて、何でそんな言い方するの?双葉さんのために泣くのも悲しくなるのもダメなの?」
涙を一杯に流しながら、目を吊り上げワタシを睨み付ける。
「パポは双葉さんのために泣くよ悲しむよ!!双葉さんが大事だからだよ!」
そう叫ぶと、パポちゃんは顔をクシャクシャにし、ワタシに抱きついた。
「双葉さんのバカ!双葉さんの周りの人たちのバカ!みんなバカ!バカ!」
パポちゃんは泣きながら、癇癪を起こしたみたいにワタシの胸をポカポカ叩く。
「お父さんとお母さんも、お姉さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、何で双葉さんの本当の言葉をきいてあげようとしなかったのさ!言わせてあげる機会をあげなかったのさ!」
「恋人だった男の子も女の子も、何で双葉さんの心に痕を作るようなことしたのさ!」
「双葉さんは優しすぎるんだよ、バ」
バカ、と言いかけて、パポちゃんの口の動きが止まった。
「パポちゃん?」
「アー」
間延びした声を出し、ワタシの太ももの上に正座していた体が後ろへと傾く。
「ーえ?」
倒れたはずのパポちゃんの姿が、ワタシの目に映らない。
「パポちゃん、パポちゃんっ」
立ち上がり名前を呼んでも、パポちゃんは見えず返答もない。
「そんなっ…」
どこかにパポちゃんが行ってしまった。
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