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ある日、私は思い切って想いを伝えた。場所は図書館の隅。放課後は先生も席を外してる事が多いから。
「私、あなたの事が好きなの」
分かっていた。無理なことぐらい。でももしかしたらって思って。胸の中には水に垂らした一滴の赤のように淡い期待があって。それを掬い上げたくて。
「ごめん。俺、好きな人いるから」
でもやっぱり赤は指を零れ落ち水へ溶けていった。
「誰?」
知ってたけど、私じゃないその子の事を尋ねた。
「青山」
「でも彼氏いるよ?」
「分かってる」
なら私にしとけばいいじゃん。そう思った。どうせそっちが叶わないならこっちにしてよ。
「でも好きだから」
そう言うあなたの双眸は他所を向いていた。こんな時でさえ私を見てくれない。あなたがずっと彼女を見ているように私もずっとあなたを見てるんだから。ちょっとぐらい私も見てよ。
「ごめん」
謝るぐらいならほんの少しでいいから私を見て欲しかった。
だから彼の胸に触れながら少し顔を近づけた。逆に退いた彼は後方の本棚にぶつかる。
「嫌だ」
構わず近づく憧れの顔。
「お、おい」
そして私は触れ合う一歩手前で止まった。
「一回だけでいいから。私を見てくれてたらそれで」
彼の息遣いが分かる。私は彼を見上げたが目は合わない。
「いい? 嫌なら突き放してよ」
数秒。ずっと彼は目を逸らしたまま。
でも次の瞬間、その綺麗な瞳が私の方へ向いた。目と目が合う。私の瞳には彼がいて、彼の瞳には私がいる。
その瞬間、思わず最後の距離を縮めた。待っていた時間よりも短いほんの一瞬。
離れていく最中もずっと合い続けた目。
「ありがと」
私は喜色を浮かべてその場を去った。
嬉しかったけど、もう合うことは無いんだと思うと少し寂しかった。
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