そろそろ会議に飽きてきたふたり

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 するとすぐに、ぎゃっ、コウモリ! あっち行け! ヤベっ、トイレどこ!という男の慌てた声が天井裏から聞こえてきた。 「……おしっこ、近いのかぁ。大変だなぁ」  ヤダ、ここで漏らさないで! わかった! こっちから! とこんどはミカの声。わかったって、何が?    大騒ぎの天井を眺めていると、突然天井の板が一枚、ぼんっとすっぽ抜ける。その穴から人間の姿に戻ったすっぽんぽんのミカが、ぴょーんと飛び降りてきた。 「テオ! 泥棒さんにトイレ貸してあげて!」 「はあっ?! 泥棒に!?」  するとミカに続いて、黒ずくめの若い男が、シュタッと忍者のように着地する。 「すんません! お手洗いお借りしまっす!」  なぜかトイレの場所も把握しているらしく、一直線に飛び込んで行く。いったい何が起きているのだ。 「テオ、やっぱり305のオヤマダさんだった! 頻尿の人!」  すっぽんぽんのミカが俺にこっそり耳打ちをする。 「やっぱり、ってどういうこと?」 「この前コウモリ散歩してたらさ、あの人、泥棒の苦労を僕に打ち明けてきたんだよ」 「あらぁ、泥棒さんもやっちゃったねぇ。警察に通報しとく?」 「でもさぁ、うちらも住居不法侵入の血液泥棒だし、同業じゃない? 忍び込むのも盗むのも大変だよねぇ。その苦労、お察ししますっていうか」  なぜかこんなときに限って慈悲心を発揮させるミカに、謎の生物Tシャツをすっぽりかぶせる。  せっかくいいところだったのになぁ。泥棒さんを見送ったらまたすぐに脱がせよっと。  何度か水の流れる音がした後、スッキリとした顔をした泥棒さんが部屋に戻ってきた。 「……ええーと、ミイラ取りがミイラにトイレを借りるという、これまたなんともアレな話ですが……えっと、寛大なご対応、恩に着ます」  三人のあいだに気まずい空気が流れる。 「ど、ドロボーですよネ?」 「こ、コウモリですよネ?」  ミカと男の声がかぶった。
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