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とりあえず無事に(?)漫才発表会を終え、そのままみんなで酒盛りをはじめた。
俺が唯一飲めるのは赤ワイン、ミカはファンタグレープ。
消化器が死んでるから食べ物は入らないのだが(万が一食べてしまったときには吐くしかない。そのまま残しておくと胃の中で腐る)赤ワインだけは身体が血液と勘違いするらしく、摂取することが可能。(なおファンタグレープを血液と勘違いするミカの身体構造はいまだに謎)
酔ってショーくんを襲いはじめるダーチャと、それを煽るみなさまを部屋に残し、そっとベランダに出た。ポケットからセブンスターを取り出し、火を付ける。
夜風が気持ちいい。俺を追って、ミカもベランダに出てきた。
「テオ、僕らの漫才どうだった? 面白かったでしょ?」
なぜそんなに自信満々なのかわからない。でも本人が楽しそうで何よりだ。
「安心できませんよ、穿いてないんですから」
「今日は穿いてるじゃん」
「当たり前だろ、じゃなくて、あたりマエダのクラッカー」
そう言うとミカはきゃらきゃらと笑った。
不思議だな、と思う。あれだけ恋愛が長続きしなかった俺が、ミカとはもう120年も一緒にいる。お子さまでワガママで手がかかって仕方ないのに、一緒にいるのが単純に楽しい。
楽しいし、可愛いし、好き。
不思議だけど、気持ちが出会った頃のまんま。ヴァンパイアになったと同時に、自分の中の時が止まってしまったような感じがする。
チビっ子のミカを背中から抱きしめた。
何となく、飛びたいな今夜。ふたりで夜の海を散歩したい。世田谷から東京湾ってけっこう遠いんだっけ?
そんなことをぼんやり考えていると、腕の中のミカが、あっ!と声を上げた。
「見て、テオ! 恋のシュラバだ!」
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