放浪するピカチュウばな奈の巻

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 隣の405号室のピンポンを押す。すると部屋の中から、アカリさんがにこやかに顔を出した。彼氏の方はまだ帰宅していないらしい。  今日のアカリさんも、がプリンプリンだ。隣でミカが睨みを利かせているので、鼻の下が伸びそうになるのを必死に耐える。 「コンニチワ〜。アカリさん、ポケモンのオカシ、ヨカッタラ食べませんカ?」 「あっ……えーっと、嬉しいんですけど、私が勝手にそういうの受け取っちゃうと、あとでちょっとマズいことになっちゃうんで……」  なぜかオロオロと視線を泳がせる。なんだろ。結構亭主関白なのかな?  無理やり渡すのも悪いので、アカリさんとはお別れし、つぎの部屋に向かう。  403の社会人BLカップルは帰宅が遅いので飛ばし、401号室へ。 「ところで、河童と人参って東京ばな奈食べるの?」  ミカが不審げな声を出す。たしかに。いつもキュウリかかっぱ巻きを齧っているが、それ以外は見たことがない。人参に至っては食生活が謎だ。むしろ自分が食糧ではないか。 「人間にするか」  エレベーターで一番下まで降りた。  
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