放浪するピカチュウばな奈の巻

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 201号室にはバリキャリの女の人が最近引っ越してきた。まだちゃんと顔を合わせたことがない。血が美味そうか確認がてら挨拶しておこう。  ピンポンを押すが反応がない。さすがにバリキャリはまだ働いてるか。  諦めて帰ろうとすると、缶ビールとおつまみがパンパンに詰まったコンビニ袋をぶらさげた大久保さんがちょうどエントランスに入ってきた。 「あっ、ハジメマシテ! ボクたち505に住んでるカレシとカレシでーす! ボンジュール!」  ミカが妙なテンションで大久保さんに挨拶をする。  もーその自己紹介ヤメロ。歳の離れたフランス人ってだけでも怪しいのに、さらに同性愛カップルって情報多過ぎだろ。  しかもヴァンパイアだし。  案の定、大久保さんは目を白黒させている。 「えっ……あの、えーと、ここに住んでいる方? 外国の方ですか? 日本語、お上手ですね……で、えーと、本当にあなた方、カップル、なんですか?」 「ソウデース! こっちのだらしなイケメンはテオ、ボクのことはミカって呼んでね! ボクたち花の都、おフランスはパリからはるばる日本にやって来ました〜!」 「ええっ……このマンション、イケメンのゲイが多過ぎない……? 何これ? いまの流行りなの?」  大久保さんがぶつぶつ独り言を言う。うん、気持ちわかるー。俺もそう思うもんー。 「ヨカッタラコレ、お酒のオツマミに、ドウゾ」  ピカチュウの菓子箱をおずおずと差し出すと、大久保さんの目がぱっと輝いた。 「わーカワイイ! ピカチュウの東京ばな奈なんてあるんだぁ! わざわざありがとうございます!」  やっぱり女性はカワイイものが好きなのだ。素直に喜んでくれるとこっちも嬉しくなってしまう。  深夜になったら血をもらいに行こ〜。アルコール度数高めで美味しそ〜な気がする。(ミカは未成年だから大久保さんの血液は禁止!)
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