テオミカ♡食べ歩き会議

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 初めて会った管理人のヒロさんは、親子にも兄弟にも見えないフランス人ふたりを見て、少し不思議そうな顔をした。そんなヒロさんの顔色を見て、ミカは覚えたての日本語で堂々とこう言ってのけた。 「ボクたち、デス」  あのときはさすがに焦った。 「ああ、そうですか……それはとても、素敵ですね」  管理人さんは驚きもせず、ラクダのような長いまつ毛を切なげに伏せた。  その瞬間、俺たちはそっと目配せをした。  ――管理人さんも、だ。  うまくやれそうだ、と確信した。  その後、ここの住人を調べていくうちに、どうやらこのマンションには俺たち以外にもゲイカップルが数組いることが判明した。  403号室のサラリーマンカップル、307号室の国際カップル、どうやら202号室もそうらしい。  もしやジャポンってゲイ大国なのだろうか? どうりでBLの売り上げがいいと思ったわ。  かつてパリで売れない画家をしていた俺は、10年ほど前、ネットで出回っていた日本のBL漫画を真似て、一本試しに描いてみたのだ。  自分たちをモデルにした、ヴァンパイアものの耽美BL。それをTwitterで流してみたところ、予想外にバズってしまった。  以来俺は、プロの覆面BL作家として生計を立てている。いまは何でもネットでやりとりができるから、流れ者にはもってこいの職業。  ちなみにペンネームは「ドラキュラ伯爵人」。  ミカは俺の仕事中のペンタブを脇に押しやり、一冊のキャンパスノートをばさりと広げた。  その1ページ目。覚えたてのひらがなで何やらタイトルらしきものが書いてある。
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