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「うん……じゃあ同じ階の、えーっと、クタベさんはどう?」
501号室。東の角部屋。見た目はイケてるエリートサラリーマン風だ。
だがその名を見て、ともに押し黙る。
「……うまく言えないけど、こいつヤバい気がするよな」
「そうなんだよ。若くてイケメンで身体も鍛えてるし、食生活もよさそうなんだけど、妙な気配がするんだよね……何と言うか」
「「血生臭い」」
俺たちの声が揃った。
そうなのだ。血だから血生臭いのは当たり前なのだが、人間の血としては何とも言えず奇妙に血生臭いのだ。
こういう匂いは、たとえばそう、独裁者とか殺人鬼とか――
「クンシ、アヤうきにチカヨらず、だよ、テオ」
ミカが習いたての日本語をドヤ顔で披露しながら、dangereux(危険)、と赤ペンで書き入れた。ヴァンパイアだってサイコパスは怖い。
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