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 それから、どのくらいの時間が経ったのだろう。いつの間に眠りについていたのか、目覚めた時にはっきりとした時間の感覚は取り戻せなかった。窓を覆うカーテンの隙間から差し込む日の光から察するに、どうやら日付が変わり、しかもすでに昼に近い時間帯のようだった。今日の夜には、もう頼子が出張から帰ってくるという日だ。しかし、妻の事をあれこれ考えている余裕はなかった。目覚めて間もない私の頭の中を、突然稲妻のようにひとつの意思が貫いたのだ。  肉が、喰いたい。どうしようもないほどに。相変わらず私の内臓から命令の如く発せられたその欲求に、私は逆らう術はなかった。昨日買い込んで来た後、冷蔵庫に詰め込んでおいた生肉を取り出し、温めもせずそのまま食らいついた。一口齧る度に感じる肉の感触が、更なる欲望を駆り立てた。ただもう夢中で食い漁っているうち、私はあれだけ大量に買い込んだとてつもない量の肉を、気がつくとすっかり食べ尽くしてしまっていた。  しかし、驚いた事に。私の内臓は、それでもまだ満足していなかった。更なる肉を体内に取り込む事を求めていたのだ。すでに昨日から、一人の人間が食す量としては桁外れと言ってもいい肉を食べているのに。これからまた買出しに行かなくてはならないのか、でも昨日行った店にさすがに二日続けては行けないだろう。今日はもっと遠出をしなきゃならないかな……そんな事を考えながら、私が腰を上げようとした時。  冷蔵庫から出した肉の臭いを嗅ぎ付けたのであろう、あの野良猫がまた部屋の中に入り込んで来ていた。部屋いっぱいに散らばった空のパックに鼻を近づけながら、どこかに食べ残しはないかと探している猫を見た途端。私の中で、何かが弾けた。先ほど、買い込んだ肉を食べ尽くしてなお感じていた食欲が求めていたのは、肉の「量」ではなく。その「質」だったのだと、私は瞬時に理解した。昨日の昼頃から、ほぼ丸一日に渡って肉を食らい続けてきた私の内臓は、睡眠を取っているうちに、更なる変貌を遂げていたのだ。
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