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 私は妻の頬に手を添えたまま、自分の顔を彼女の美しい顔に近づけ。その柔らかな唇に口付けた。その時、私の唇が、妻の唇を感じた途端。かけがえのない伴侶を失った喪失感の影に潜んでいた、私の内なる欲望が爆発した。  私は片手で妻の額を、もう片方の手で顎を押さえ、強引に妻の口を開き。その隙間に自分の舌をねじ込んだ。私の舌先は、妻の口の中で、もう反応することのない彼女の舌を捜し求め。遂に求めるものを探し当てた瞬間、私はそれに噛み付き。そして、噛み切った。 「ううううう!」  たちまち私の口に広がる、生暖かい血の味。獣ではなく、紛れもない、人間の血。そして、人間の生肉。その味わいに、ぬくもりに、その歯触りに。私はしばし恍惚となった。それから、くちゃくちゃと妻の舌を口の中で噛みしだき、存分に味わった後、その肉片をごくりと飲み込んだ。それを待ちかねたように受け取った私の内臓は、買って来た生肉を食べた時とは比べものにならないくらいに、跳ねるように躍動した。それはあたかも、悦びのダンスを踊っているかのようだった。これが、私が予感していた、内なる欲望の求めるものの最終形だった。自分と同じ種の、ついさっきまで生きていた同類の生肉。それこそが求めていた究極のものだった。  次に私は、妻の着ていた、血まみれになったブラウスを脱がし。更に、下着を剥ぎ取った。まだ三十代前半で、子供も産んでいない妻の裸体は、本人が意識してスポーツクラブ等に通っていたせいもあるだろう、未だ均整の取れた美しい姿を保っていた。私はたまらず、妻の豊かな膨らみを持った乳房にむしゃぶりついた。両手でその弾力に溢れた丸みを揉みしだきながら、乳首を中心とした部分に食らい付き。そのまま、食い千切った。  その味わいは、私が求めていた「肉」ではなく、正確に言えば脂肪の塊と言うべきものだったが。私はほのかな甘みが口の中に広がるのを感じ、その予想もしていなかったとろけるような甘さにまた涙した。それから私の舌は、甘みを帯びた塊の一部に、おそらくは自らの死を恐れ、覚悟し、萎縮していたのであろう、小さく縮こまった妻の乳首を感じ取り。その部分をまるで名残を惜しむかのように、上下の歯で少しだけコリコリと弄んだ後、ようやくゴクリと飲み込んだ。
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