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 美しかった妻の体を、あらかた食べ尽くしてしまった後。私は血にまみれたままの姿でベッドに入り、眠りに落ちていた。あらゆる感情が一気に爆発してしまった後の、途方もない疲労感もあっただろうが。それは、私の内臓が、私の内なる欲望が。ようやくにして満ち足りた、満ち足りてくれたからこそもたらされた、底のないほどの深き眠りだった。そのまま目覚めなくともおかしくないくらいの、まさに死んだようなその眠りから、私を呼び覚ましたのは。これ以上ない腹部の不快感だった。 「うおおおお!」  私は思わず両手で腹を押さえ、叫び声を上げた。これまでに感じていたような、ふるふると痙攣するとか、そういうレベルではなかった。腹の中で、私の内臓が、上へ下へとまるで小躍りするかのように跳ね回っていたのだ。「うおおお! ぐう……」例えようもないその痛みに、私はベッドに横たわったまま嘔吐した。それでも内臓は、その動きを止めなかった。内蔵が激しく動き、腹の内壁に鈍い音を立ててぶつかる度に、私は何度もうめき声を上げていた。もう、内臓そのものが、自らの意思を持っているとしか思えない動きだった。  そこで、私の脳裏にある考えが浮かんだ。もし、私の内臓が、私の想像通りに。気の狂った私の頭の想像通りに、独自の意思を持ってしまったというのならば。それは一体、何がしたいんだ。何を訴えようとしているんだ? 私は苦痛に転げ回りたくなるのをなんとか我慢し、ベッドの上で仰向けになり。体をまっすぐに伸ばし、自分の内臓の意図するものを読み取ろうとした。そして、気付いた。  こいつは……私の内臓は。「そこから」出たいんだ!
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