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 服を脱いで裸になり、体を仰向けにして横たわっていると、私の腹部が、内側からの圧力により、ぼこんぼこんと何度も膨らむのが見えた。腹の中で、内臓が下から上へ、つまり私の腹の内壁に向かって、あたかも体当たりをするかのように繰り返しぶつかっているのだ。それはまぎれもなく、閉じ込められているその場所から解放されたいという意思の表れだった。  ようやく私は理解した。これだったんだ。あの作家仲間の言っていた、未開の地の長老が外部に持ち出すのを禁じていた、「新しい生命が宿る」とは。彼自身の言葉である、成すべきこと、果たすべき使命とは、まさにこの事だったのだ。  もはや疑いようもなく、私は自分とは全く違う命を体内に宿していた。そして私はその事に対し、なんら悔やむ気持ちは起きなかった。作家仲間を恨む事も、浅はかにも軽い気持ちであの水を飲んでしまった自分に腹を立てる気にもなれなかった。今の私を支配していたのは、そういった自責の念ではなく、あるひとつの使命感だった。  私は、こいつを、。  なぜかもうその事に、怖れはなかった。むしろ、自分がその使命を帯びた事に対し、誇りのようなものさえ感じていた。よくぞ、私を選んでくれた。この崇高なる使命に。私は、自分がこの世に生まれ、これまで生きてきた意味が、全てこの日、この時のためにあったのだと確信していた。あの作家仲間に出会い、謎めいた水を飲み。そして生肉を食らい続け、更には妻の体までも貪り食った事が。今ではそれら全てが、必然だったのだと思えた。それはみな、私がやらなければならない事だったのだ。そして、今。私はこの使命を、やり遂げなければならない。例えその事により、自分の身がどうなろうとも。
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