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キャバクラ嬢として...
私の胸当たりまである髪は恋がヘアアイロン、て奴でセットしてくれた。
「うん。内巻きに巻くだけでも充分、様になるね。今度、一緒、セット屋行こ?案内したげる」
「わからない事だらけだから、助かる、ありがとう、恋さん」
恋に爆笑された。
「恋、でいいよ、結。あ、源氏名は決めた?」
「源氏名?」
「そう。なんていうんだろ...架空の名前。私も本名ではないよ?本名は由美。ありふれた名前でしょ?」
鏡越しに恋が苦笑する。
「そんなことないよ、いい名前だと思う」
「気を遣わなくっていいよ。じゃ、私が考えてもいい?」
「うん。出来たら」
「じゃ、すみれ!すみれなんかどう?」
「すみれ...なんか綺麗な名前」
「結の雰囲気に合ってる気がして。じゃ、店長に伝えてくる。ちょっと待ってて!」
恋は茶色いショートカットにも、活発で愛嬌のある性格にも良く映える、黄色のノースリーブに細い腰には大きなリボンの付いたミニのドレスを纏い、部屋を後にした。
私は「すみれ」として、キャバクラ嬢として働くことになった。
暫くは指名も付かず、ヘルプばかりの私。
恋がお客さんを紹介してくれたり、アフターに誘ってくれたりして、次第に私にも指名客が付き始めた。
「はじめまして、すみれです」
恋のお客さんと一緒に来た、お客さんが私を指名してくれ、この店で長いお姉さん達がヘルプで2人付いた。
「可愛いね、すみれちゃん、なにか飲む?」
「あ、なんでも」
ドリンクバックがあるのを忘れた私の為に恋がカシスオレンジを二つ、頼んでくれた。
お客様にはバレないように、紙にはNの文字、それをウェイターに渡す。
カシスオレンジに見えるノンアルコール、て意味。
「私達もなにか頂いていいですか?」
ヘルプのお姉さんがお客様に尋ねると渋い顔になったけど、OKした。
私は入って間もないのに、生意気、とバックヤードで先輩たちに陰口を叩かれ始めた。
「ドンマイ、すみれ。嫉妬してるだけだから、気にすんな」
ポンッと恋が優しい笑顔で背中を叩いてくれ、ようやく笑顔になれた。
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