恋との夜

2/2
前へ
/9ページ
次へ
恋の部屋でジュースを飲みながらチョコやポテチを食べたり、一緒にテレビを観たり。 まどかさんから怒鳴られた記憶が鮮明に残ってる。 「すみれ、まだ気にしてんの?」 「だって、クビになったりしたら、住むところも無くなるし...」 「もうっ!バッカだなー、すみれは!まどかさんが支配人な訳じゃあるまいし、単なる脅しだよ。店長もさ、すみれ、清楚で甲斐甲斐しくて、入店させて良かった、て言ってたんだから。他の店に取られるとこだったって」 恋はビニール袋からマニキュアを取り出し、私の手のひらを取り、丁寧に塗り始めた。 穏やかで優しい眼差しで。 「手、小さいのに、指、長いね。ピアノとかやってたの?」 「え?ううん、全然」 全ての指に恋はマニキュアを塗ってくれた。 ラメが入った薄い紫。 「ネイルサロン行くまで、マニキュアで我慢してね」 「うん。....ありがとう、恋」 私の手元を見ていた恋がにこっと可愛い笑顔を見せ、その小さく可愛い顔が不意に近づいて来た。 ちゅ、と小さくおでこにキスをされ、私は瞬きを繰り返す。 「もっと自分に自信、持ちなよ、すみれ。すみれは可愛いし、人一倍、頑張り屋さんだけど、周りに気を遣いすぎ」 間近にある、大きな瞳を見つめた。 愛嬌のあるあどけない笑顔。 「....うん」 その晩は恋の部屋のダブルベッドで一緒に眠った。 私の寮の部屋のベッドはシングルだから、少しは広いけど...距離が近い。 「そんなに緊張しないでよ、すみれ」 苦笑する恋に思わず、ごめん、と謝ると、恋の手のひらが恋に借りたTシャツの胸を揉んだ。 「れ、恋....?」 「大丈夫。サイズ、確認してるだけだから」 ブラもしていないのに....なんだか、恥ずかしい。 「すみれ」 ふと顔を上げると、恋に触れるだけのキスをされた。 目を開けたままのキス。 「....初めて?キス」 答えられないでいると、再び、恋の柔らかい唇が私の唇を塞いだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加