カプリコーンは食べられる

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『今夜は空いてる』  俺がそう送ると、すぐに既読になり、すぐにスタンプが返ってきた。仕事の邪魔をしてしまったかと思ったが、『了解』と書いてあるスタンプの文字を見て、俺は騒ぐ鼓動をなんとか押さえるべく再び深呼吸をした。  この日はそわそわと仕事をこなし、定時を回ってすぐに作業を終えた。  先週までが忙しかった分、今週はちょっとゆっくり出来る。  射手が帰社したのは、十八時過ぎの事だった。隣の席からキーボードを叩く音が聞こえるから、まだ営業の事務作業をしている最中だというのが分かる。妙に意識してしまって、俺は無駄に明日の分の仕事まで少し行い、気を紛らわせてしまった。 「よぉーし終わったー!」  隣から射手の声が聞こえてきた。先週までそれはただの日常風景だったはずなのに、ドキリとしてしまい、俺は硬直する。 「山羊、終わった?」 「あ、ああ」 「じゃ、行くか」  そう述べた射手の声があんまりにも大きく思えて、俺は一人で唾液を嚥下する。 「どこか行くの?」  すると水瓶が顔を上げた。 「おう。山羊とデート」 「い、射手!」 「なんだよ?」
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